「最近やたらぐずる」や、「急によく泣くようになった…」といった時に耳にするのがメンタルリープという言葉です。赤ちゃんの脳や心の発達が一段進むタイミングに、不安や戸惑いからぐずりや夜泣きが増える、と説明されることが多い概念です。一方で、すべての赤ちゃんに同じように起こるわけではなく、科学的な根拠については賛否もあります。ここではメンタルリープとは何か、一番ひどいと感じやすい時期、夜泣きのピークとの関係、そして家庭でできる対処法を、医師監修サイトや公式情報をもとに分かりやすく解説します。
目次
メンタルリープとは？
メンタルリープとは、オランダの研究チームが提唱した「赤ちゃんの脳が急速に発達し、物事の捉え方が質的に変わる時期」を指す言葉です。世界的ベストセラーWonderWeeksでは、生後20か月までに10回の「リープ（飛躍）」があり、その前後はぐずりや泣きが増えやすいと説明されています。日本の育児サイトでも「脳の成長に伴って世界の見え方が一気に変わるため、不安定になりやすい」と紹介されることが多いです。つまりメンタルリープ自体は病気ではなく、「成長の節目に起こりやすい一時的な不安定さ」をイメージすると分かりやすいでしょう。
提唱されている時期と回数
一般的に紹介されるのは「出産予定日から数えて20か月までに10回起こる」というモデルです。代表的な目安として、5週・8週・12週・17週・26週・36週・44週・53週・61〜62週・72〜75週ごろに、それぞれ性質の違うリープがあるとされます。ただしこれはあくまで「目安」であり、赤ちゃんの個性や妊娠・出産の経過によって大きく前後することがあります。日本の医師監修サイトでも「同じ週齢でも全く気にならない子もいる」「あくまでもこういう時期があるかもしれないという参考程度に」と注意書きがされています。
一番ひどいと感じやすいリープはいつ？
子育てにおいて「一番きつかった」という声が多いのは、生後4か月前後・8か月前後・1歳すぎあたりのリープです。生後4か月ごろは体も目覚ましく成長し、昼夜のリズムづくりや「4か月の睡眠退行」と重なりやすい時期でもあります。8か月前後は人見知りや後追いが強くなり、メンタルリープと重なると「抱っこじゃないと眠れない」「夜中に何度も泣いて起きる」と感じやすいタイミングです。どのリープが一番つらいかは赤ちゃんのタイプや家庭環境によって違うので、「○回目が必ず最悪」というより「自分の子にとっての山場」がどこかを見つけていくイメージでとらえるとよいでしょう。
夜泣きと寝ぐずりの関係
メンタルリープの時期には、赤ちゃんの脳が新しい情報処理を覚え、これまで気にならなかった刺激にも敏感になるとされています。そのため「急に眠りが浅くなる」「ちょっとした物音で起きる」「寝る前になると泣きやすい」といった変化が出やすいと考えられます。医師監修の解説でも、ぐずりやすくなるサインの一つとして夜泣き・寝ぐずりの増加が挙げられていますが、「必ずメンタルリープが原因とは限らない」ことも強調されています。体調不良や環境の変化など他の要因が隠れていることもあるため、「メンタルリープだから仕方ない」と決めつけず、全体の様子を冷静に見てあげることが大切です。
夜泣きのピーク時期と他の要因
夜泣き自体はメンタルリープとは関係なく起こることも多く、日本の医師監修サイトでは「早いと生後3〜4か月ごろから始まり、8〜10か月ごろにピーク」という記載がよく見られます。また別の小児睡眠記事では、9〜11か月ごろの睡眠退行が一般的な山場とされています。さらに7〜9か月ごろは、もともと夜泣きが増えやすい時期にリープが重なり、「いつもよりひどい」と感じる家庭も多いようです。一方で、歯ぐずり、日中の刺激過多、生活リズムの乱れ、鉄欠乏性貧血など、医学的な要因が夜泣きを悪化させているケースも指摘されています。
メンタルリープ期に見られやすいサイン
メンタルリープ期に多いとされるサインとして、急に抱っこを離れたがらない、普段より泣きやすい、機嫌の良い時間が短い、夜中に何度も起きる、ママやパパの姿が見えないと激しく泣く、といった行動が挙げられます。中には「今までできていたことを一時的にやらなくなる」「寝返りしなくなった」など、発達が後戻りしたように見える行動が出ることもありますが、一時的なものとされており、しばらくすると新しいスキルと一緒に戻ってくることが多いと解説されています。こうした変化がいくつか重なった時、「今は脳ががんばっている時期なんだな」と目安にすることで、親側の気持ちが少し楽になることもあります。
基本的な対処法
対処の基本は「いつもより丁寧に安心させてあげること」です。メンタルリープの時期は赤ちゃん自身も戸惑いや不安を感じていると言われるため、抱っこを増やす、ゆっくり話しかける、よく目を合わせるなど、スキンシップを多めに取ることが勧められています。寝る前は照明を落として刺激を減らし、毎日同じ順番でお風呂→授乳→寝かしつけなどのルーティンを作ると、「そろそろ寝る時間だ」と赤ちゃんが見通しを持ちやすくなります。日中に外気浴をしたり、適度に体を動かす遊びを取り入れることも、夜の睡眠リズムを整える助けになります。完璧を目指すより「今日はこれができた」と小さな成功を積み重ねていきましょう。
まとめ
メンタルリープとは、赤ちゃんの脳や心の発達が一段進むタイミングに現れやすい「ぐずり期」を説明する考え方です。生後20か月までに10回のリープが起こるというモデルが有名ですが、すべての赤ちゃんにぴったり当てはまるわけではなく、科学的な裏付けもまだ議論の途中です。ただ、「今は成長の山場かもしれない」と知っているだけで、夜泣きやぐずりに向き合う親の心が少し軽くなることも事実でしょう。大切なのは、「泣かせてはいけない」と完璧を目指すことではなく、赤ちゃんと親自身の安全と休息を優先しつつ、必要なときには医療機関や相談窓口に頼ることです。メンタルリープを“便利な目安”としてほどよく活用しながら、親子それぞれのペースで成長を見守っていきましょう。
